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クラッシュは僕の人生において、とても重要な位置をしめています。もしもこのバンドが無ければ、きっと今とは違う自分であったろうとさえ思えるほどです。何が僕をそこまで惹き付けたのか、言葉でそれを説明するのはとても難しいですが、当時僕が思い描いていた「ロック・バンドの理想形」が彼らだったという事は間違い在りません。クラッシュは僕にとって、同じ時代に同じ空気を吸ったリアルなカリスマ・バンドだったのです。 オリジナル・メンバーのジョー・ストラマー、ミック・ジョーンズ、ポール・シムノンの3人共が、強い個性とビジョンを持っていました。男気、時代性、様式美、ロックンロールが持つ様々な側面を彼らがそれぞれ持ち寄って、クラッシュと言う太いバンドに結実させたのです。一見して、とにかく何だかバランスが良い。そしてカッコ良かった。今現在までに何組ものロック・バンドがこの世に誕生して来ましたが、ビジュアル面のカッコ良さで言えばクラッシュが一番ではないでしょうか? いや、一番はビートルズかな?どうでしょう。まあそれくらいカッコ良い。当時僕は先ずピストルズ。直後ジャム。やや遅れてストラングラーズ。そしてクラッシュ。その後クラッシュ一筋だったのでダムドには行かず(その頃は既に新生ダムドだったので興味も無かったのですが)、とパンク5大バンドを聴いて来ました。はじめは何だか王道過ぎてラディカルさに欠ける様な気がして、なんとなくクラッシュを敬遠していたのです。 今思えば彼らも徐々に成長していった訳ですが、いずれにせよ僕は間違っていました。クラッシュは時代を見つめ、ロックの本質を追及する、不易流行の名のもとに走り続ける本当のロック・バンドだったのです。それを知るに至ったきっかけは、TVKのファンキートマトで、ズード・スーツにリーゼントで船上で演奏する「ロンドン・コーリング」のビデオを見た時です。「所詮ピストルズ在ってのクラッシュでしょ」と基本的にノー・マークだった僕は、ブラウン管越しに発せられた彼らの疾走感に一発でやられました。それは単純に「こんなカッコイイ奴等だったのか。やられたー」って感じでした。結局僕はフィフティーズというか、初期のロックンロールを感じさせないバンドはロック・バンドとして認めませんし、逆にチラッとでもその辺の影響が見えるとフムフムと納得してしまう「筋」を重んじるリスナーな訳で、歴史を勉強しない奴はクズだと思っているし、パンク・ロックに惹きつけられた理由も、破壊者の様に振る舞いながらもその実、ちゃんと押さえなければならないところは、きちんと押さえている感じが好きだったからです。クラッシュは満を持して「そこ」を全面に打ち出して来ました。なので当然のようにクラッシュのシンパとなり、注目していく訳ですが、彼らは常に人が思っている事の一歩先にいる様でした。それもただ走っているのではなく、一歩一歩地面を踏みしめながら速足で歩いているといった重厚さと男らしさが在りました。ひいきのバンドがいい意味で変化して行く態を、リアル・タイムで見れることは本当に快感で、クラッシュは正しくその欲求を満たしてくれました。演奏スタイルや音楽性は勿論のこと、その時代感覚は他のバンドが全てヤボッたく見えるほど、日に日に鋭さを増していき、見ていてドキドキするほどでした。 始めに買ったのは当時絶賛発売中であった名盤「ロンドン・コーリング」でした。クラッシュがバンドとしてピークを迎える直前のアルバムですが今聴いてもこれはスゴク良いです。サウンドそのものが最高に僕の好みで、ボーカルと演奏のバランスが良いと言うか、音のレベルも厚すぎず薄すぎずでキレがいい。2枚組というのもよかった。気合いが入ってます。その後彼らは「サンディニスタ」という3枚組を出しますが、これはちょっとやり過ぎました。子供には値が高い、と一部のファンには不評でした。たしかイギリスではバラで売っていたようです。しかし僕はそんな彼らの溢れる情熱が好きです。そしてロンドン・コーリングのツアーで北米を廻った時の写真集「BEFORE & AFTER」も重要です。ペニー・スミスと言うロック系女流写真家が撮っているのですが彼女の持ち味が十二分に発揮されるのがクラッシュのメンバーを被写体にしたときでしょう。硬質な躍動感と女性ならではのナイーブさがうまくミックスされて、クラッシュのいいところを拾っています。とくにこの写真集はロード・ムービー的な要素も含まれていて本としても良く出来てます。僕の持っているのは英国版ですが後に日本版も出てましたから今でも探せばあるのではないでしょうか。この写真集によってクラッシュの人気は不動のものとなったと言っても過言ではないでしょう。 単なるビジュアル系のバンドならカッコ良ければ良いほど逆に情けないですが、中身が詰まっていればカッコ良さは二倍三倍となり、ジョー・ストラマーが何か言えば「はいそうですか」という感じでした。実兄が右翼団体ナショナル・フロントのメンバーで、71年に自殺してしまったという過去のせいかもしれませんが、メンバーの中でも彼は特に問題意識が強く、常に社会情勢に気を配り、それに対しての意見をシンプルなメロディーにのせて叫んでいました。来日した際にインタビューで成田空港問題、三里塚闘争について語ったときには、日本の僕よりも他国人の彼の方が当地の社会情勢に詳しい事にショックを受けたものです。体制側の人やしらけ派の人は、ビートルズ解散後のジョン・レノンの様にメッセージ色の強い人に対して直ぐ、子供っぽいとか、お前らに何が判るのかと白い目で見ます。それをコマーシャルにしてるじゃないかと。確かに生活環境の違う人々のメッセージを誰がどれだけ理解出来るかは判りません。しかし僕にとって重要なのは彼らが何事に対しても本気であったという事です。善悪の問題ではなく行動したかどうかという事です。自分の信じた道を真面目に強かに生きてこそ男の子と、僕は彼らから学びました。話が音楽から大分離れてしまいましたがザ・クラッシュとはそんなバンドです。 "Combat Rock"発表後、ドラムのトッパー・ヒードンを解雇("Rock the Casdah"のプロモビデオでは既にファースト・アルバムのドラマーTory Crimesがドラムをたたいています)、その直後のミック・ジョーンズの脱退で事実上バンドは終焉を迎えます。その後新メンバーで"Cut the Crap"を出しますがサウンド的にクラッシュとしてはひどいものでミック・ジョーンズの存在の大きさを知ると共に、もう終わったものなんだとファンの悲しみを誘います。それよりもポール・シムノンの"Havana 3AM"やBig Audio Dynamiteのジョーンズ&ストラマー、プロデュースの"No.10, Upping st."をクラッシュの続編として聴かれる事をお勧めします。(1998) |
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