ELVIS COSTELLO: LIVE FUJI ROCK FESTIVAL '98


 昨年の"FRS.悪夢のキャンセル"から一年。"黄金の新宿厚生年金"からは約二年。待ちに待ったコステロが東京に帰ってきました。しかし何やら不安がつのります。なにしろ日本でのロック・フェスティバルですから観客は10代、20代の人がメインであきらかに目玉はベック、ビヨークです。かろうじてDEADを仲介にソニック・ユース、世代的に清志郎がコステロの仲間といった感じです。イギー・ポップもいますが彼はすべてを超えていますから例外ですね。はたしてコステロはこの場に受け入れてもらえるのか?今の若者も時代を越えたロック魂を認識出来るのか?ナイーヴのピアノとギターだけでこの会場を盛り上げれるのか?不安ばかりがつのりましたがどうやらコステロ自身も同じ気分だった様で時間になってもなかなかステージに上がって来ませんでした。事後説明によると機材のセッティングにずいぶん手間取ったとの事ですが僕には何か誤魔化しているように見えました。

 主催者のMCに促されてようやく登場したコステロは僕が今まで見た中で一番ファッショナブルなスタイルでした。炎天下の中で黒のシャツに黒のスーツ。U2のボノ風のグラサンに短く刈り込んだ髪の毛は気合いの入った証でしょうか。うぉーっ!と一気に盛り上がったところで演奏がスタート。しかしギターの音量のセッティングが悪かった様で頭の3曲めぐらいまで演奏しながらミキサーに向かって音を上げろと怒りの指示を飛ばしていました。コステロ先生の苛立ちがこちらまで伝わって来てハラハラしましたが、そこは先生もファン思いの人ですから気を取り直して演奏を続けます。しかしこのトラブルで調子を崩したのかちょっと会場全体のノリが悪いです。それにやっぱりリズム隊がいないとイマイチ寂しいです。観客も気持ちは在るけどどうやってノッたらいいのか判らない人が大半だった様でした。そんな中でコステロ自身の気合いは入っているという何だかちぐはぐな状態になってしまいました。それでもねじふせるように観客を引摺りまわすのがコステロのステージの醍醐味なんですが、なにしろ今回は時間が短すぎました。持ち時間50分のところを始めにもたもたしたせいで正味40分のステージ、いつもならここら辺からガンガンにノッて来るところなんですから。"Peace, love and understanding"が始まったところで「え?まさかもう終わり?」と時計を見ると制限時間がせまっていて、アンコールで"Pump it up"をやられた時にはメイン・ディッシュを飛ばされてデザートを食べさせられた気分でした。たぶんコステロ自身も不本意だったと思います。

 それにしても選曲にやや問題があった様な気がします。非常に興味深い選曲なのでファンの方はSET LISTを是非参照して下さい。彼のファンの人とそうでない人に対してのコステロの選曲、彼のやさしさは伝わりますが正直言って僕としては"Alison"と"Pump it up"は演らない方がよかったと思います。そこまで気を使う必要は無いです。だってコステロ先生はロック界の王様なんですから知らない曲を演ったってそれが良ければ観客はノリますよ。そうでしょ先生?アナタもまだ若いな。何だか期待が大きかっただけに辛口のレビューになってしまいましたが、まったく不満だったわけではありません。"Everyday I write the book"や"Blue Chair"、"Shallow grave"が聴けたのはとてもうれしかったですし、何よりも2年ぶりに見たコステロが思ったよりも若々しかったのでホッとしました。またなるべく早い時期にフル・ステージを見せて下さい。お願いします。


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