ELVIS COSTELLO and THE IMPOSTERS: SUMMER SONIC 09


 久々にコステロが日本に帰って来た。国際フォーラムでオーケストラをバックに演ったのが最後なので丸々三年ぶりになる。舞台はサマー・ソニック。サマー・ソニックも僕にとっては久しぶりの10年ぶり。グリーン・デイやジェームス・ブラウンが出た一回目のサマー・ソニックが懐かしい、と言うよりもあれからもう10年経ってしまったと思うとなんともゾッとする。時の経つのは早い。今のサマソニは10年前と違ってステージが6つも7つもあるので僕の様なあれもこれもとがっついた客にはちょっと観づらい。この日コステロ以外にしっかり観たのはORESKABAND、JOAN JET AND THE BLACKHEARTS、THE SPECIALSと深夜のミドリでそれぞれフェスティバルという枠の中でもしっかり演ってくれて良かったが、トリのスペシャルズがアンコールが無かったのががっかりした。暑くてキツかったのかもしれないが来日を待っていたファンが多かっただけにあの対応はちょっとシラケた。ちなみに一番良かったのはオレスカバンド。弾けるような演奏がビーチ・ステージにバッチリ似合っていたし、ガールズ・バンドは楽に観れるから良い。ジョーン・ジェットは失礼な言い方だが意外と良かった。実物はかなり美人だし、声にも艶がありそれなりに魅力があると思った。ミドリは相変わらずだがちょっと方向性を見失っているような気もした。最初からそんなもの無いのかもしれませんが・・・まあ良かった。その他のバンドはちらっと観てつまらないと他のステージが気になってしまい、直ぐに場所を移ってしまうので観たとは言えない。とにかく歩き疲れた。どうやらコンサート中心では無く、フェスティバルと言うかイベント全体を楽しむお祭り的なものを目指している様なのでそれはそれで良いとは思うがそれにしても会場全体が広すぎるね。そう言えばマリン・ステージを出たところのちっちゃなイベント・テントみたいなところでディープ・パープルやレインボーのコピー・バンドが出ていてばかウケしていたのが印象的だったが、バンドのメンバーと客とのハード・ロックに対する受け止め方がちょっと違う気がして更に興味深かった。演奏を聴くというよりも演芸を観るような観客の笑いと、隣りのテントのバー・カウンターで狂った様に踊る水着のお姉さん達の肢体が頭から離れない。

 さて、コステロ先生。本当なら単独公演を観たいのだが今回はサマソニのみの来日との事。此処のところすっかりご無沙汰だったし、単独公演も無しとはコステロ先生、日本が嫌いになっちゃったのかな?前々回のインポスターズでの来日の際にいつもよりもアンコールが少なかったし、ステージ自体が何となくいつもと違う気配だったのが気になっていたのだが、僕と同じ様な心持ちのファンらしきおぢさん達がちらほらと前衛に集まって来た。めずらしくレスポールを肩に登場した先生、やはりまずは「MOMOFUKU」から一曲。ビリビリとギターを歪ませて気分は上々のご様子。すぐにテレキャスターに持ち替えて「Pump It Up」「Uncomplicated」「Radio Radio」と一気にたたみかける。先生の熱演にコステロ・ファンもそうでない人もすっかり暖まったところで意表をついた「Everyday I Write The Book」を良い感じのアレンジで出して来た。ここで豊洲でやったフジ・ロック・フェスティバルでの先生が脳裏によぎる。あのときはスティーヴ・ナイーヴと二人で、野外で、もう一つ波に乗れない演奏だったが、あのときのオトシマエはきっちりとこの曲でつけた感じ。この日の「Everyday I Write The Book」は凄く良かった。この曲でしっかりと観客の手応えを感じたのか、コステロ先生はご機嫌で演奏を続けて行くのだが、今回はかなりギターにこだわっていた様子がうかがえた。いつものジャズ・マスターと前出の二本の他にギブソンのアコギとファルコンみたいな奴の計5本をとっかえひっかえ使用し、演奏自体もいつもより更にギターが一歩前に出て来ていて、ギター・ソロも結構多かった印象があった。シビレたのは「Oliver's Army」の時、ギタテクの持ってきたテレキャスターを受け取ろうとしたが急に気が変わったのかこれを制し、後ろに置いてあったアコギに持ち替えた瞬間だ。これって僕らがアシスタントが持ってきたハッセルを制し「やっぱりマキナでいこう」みたいな感じなのでしょうか?それなら非常にわかる気がする。その行為に入り込んでるから感覚的にピピッとその場の空気に反応して予定変更したりするわけですね。コステロって言うと「歌」「歌!」って感じなのでこうしたギタリスト的な部分はあまりスポットが当たらないが多分コステロ自身はかなりこだわっていると思う。それも年々強くなっているような気がするのは、やはりコステロが更に更にコアなアメリカ音楽を研究しつづけているからに違いない。今回はいつもの季節感の無いダークなスーツにやや後退が進んだおでことちょびひげ、ラスベガスのイカサマ師のようなグラデーションのサングラスもかなりアメリカンでイカしていた。これにソフト帽をかぶれば英国製クレイジー・ケンの様だろう。出来ればニヤッと笑った口元に金歯も欲しいところ。イメージは大事だ。とにかく年々濃くなって行く先生に盛大な拍手を送りたい。最後にアンコールで一曲だけやった「Mystery Dance」も良かった。あの短い、駆け足の様なロックンロールが時間の限られたフェスティバルでの礼儀だし、ファンに対する愛情だと思う。「ちょっと一発だけ演るか」そんな気持ちが嬉しい。御陰で従来の半分程のボリュームではあったが十分満足したステージでした。近年まれに見る日本公演のブランクを不満に思っていた僕だが、それはたぶんアーティストの本意ではなく、何か大人の事情があるのだろうと思い直す事にした。「また帰って来たい」と言っていた先生の言葉は本心だと思う。


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